ASDまたは「ASDじゃないかな?」と思われる方が公務員になることについて、お話したいと思います。
目次
- 事務職は向かないと思います
- 技術職はどうなのか?
- ほぼ全員がコミュニケーションに悩んでいる
- 検査を受けている人はあまりいない
- 障害者枠の試験について
事務職は向かないと思います。
相談に来られる方に「なぜ、公務員を希望するのですか?」と伺うと、ほとんど「自宅から通える、異動がないから」という答えがかえってきます。
理由は、住んでいる環境を変えることに抵抗があるのかと思うのですが、そうなると地元の市役所で、採用の多い事務職が候補に挙がってきます。
しかし地方公務員の事務は、打ち合わせや電話対応といった曖昧な言葉を掴まなければならない事もあって、ASDの傾向のある人にはハッキリ言ってあまりオススメできる職種ではありません。
それでも地元の公務員になりたいと考えている人は、窓口などで対応している言葉のやり取りを聞いて「これならできるかも・・」と勘違いされているのが原因かもしれません。
市民の方と接する窓口の仕事をされている方でも、イレギュラーな対応を求められることもよくあります。また、その場で状況を説明しつつ他の職員の方と相談しなければならない場面もあります。
生活環境を第1にすることは大事です。でも仕事に就いてから苦労するケースもありますから、職種は慎重に選ぶ必要があります。
技術職はどうか?
ASDの傾向にある人は理数系が得意な人が多く、事務職ではなく、技術職を希望する人もいます。ただ市役所の技術職はほぼ通年の採用はありません。都道府県職員の募集であっても人数はそんなに多くはありません。事務職に比べれば市民の窓口になることは少ないのでいいとは思いますが・・
ほぼ全員がコミュニケーションに悩んでいる
次に「会話についていけない」ことが理由でうまく人付き合いができなかった経験から、コミュニケーションに不安を抱えている方が多いことです。
まずはトラウマになっている経験をみじかな人に話すなどして、その体験を客観視するといいのですが、これもできる状況にある人とそうでない人がいますので難しいところです。
検査を受けた上で、医師の診断でASDかどうかが判るわけですが、仮に診断が下ろうが、そうでなかろうが、人には、得意なこと、不得意なことがあります。太りやすい人や胃腸が弱い人、アレルギー体質の人など、程度の違いはあっても、個人的な特徴を持っているものです。
大事なのは、それを前向きに受けとめて「適応させていく」ことを考えて職業をとらえてください。
検査を受けている人はあまりいない
「アスペルガーなんです」と言って、相談される人でも、ネットで調べて「自分にあてはまる」と思うだけで、検査を受けていない場合はよくあります。ご自身で、当てはまることが複数あるなら、その傾向はあるかもしれません。でも、それと診断とは別です。腰が痛いと言っても、その程度や原因は様々ですから、本当に知りたければしっかり検査を受けるといいと思います。
障害者枠の試験を狙う?
公務員試験には「障害者枠」の試験がありますが、その試験を受けるために障害者の申請を考えている人を見かけますが、少し考えた方がいいと思います。
公務員試験の障害者枠は「身体」「知的」「精神」の3つが該当しますが、ASDはこのうちの「精神障害者」の分類に扱われます。国からは障害者の採用に際して、この3つの分類を平均的に採用するように地方自治体は指導をされています。ですが実際は障害者枠で一番採用されやすいのは「身体障害者」です。
仮に足が不自由でも電話応対や文書作成ができれば、通常業務に支障がないからです。
知的障害の人は技能職などで仕事を限定すればしっかり働くことができる反面、一見すると健常者と見られがちな発達障害の方の採用はまだまだ進んでいないのが現状です。安易に障害枠で公務員を狙うことは避けた方がいいと思います。
適応することを心がけて、可能性を広げましょう
誰にでも出来ることと出来ないことがあります。得意なことを仕事にするのは当然のことです。覚えることが苦手な人がメモを取るように、大事なのは苦手ものをはっきりさせて、それに対応するためのトレーニングをすればいいだけです。
また職種についてお話ししましたが、公務員の仕事の中にも、あなたに合っている仕事は他にもたくさんあると思います。ASDの傾向があるとご自身で思っていて、公務員就職に興味があるようでしたら、あなたの状況を伺いながらご相談に応じますのでご連絡ください。